
呼吸が苦しそうなら、まず119番への連絡を
予防接種から帰って間もなく、お子様の体に赤いじんましんが広がり、肩で息をするように苦しそうにしている。そんな場面では、原因を確かめるより先に動く必要があります。じんましんに息苦しさが重なっているなら、症状が軽く見えても119番へ連絡してください。この記事では、処方済みのアドレナリン自己注射薬を医師の指示に沿って使うときの確認点、救急車を待つ間に家族へ頼めること、接種内容と症状の記録、救急対応後の相談の流れを順にまとめます。
この記事の要点まとめ
- じんましんと息苦しさが重なる場合は、原因の確認を待たず119番へ連絡する。
- 処方済みの自己注射薬は医師の指示に沿って使い、救急車を待つ間は様子に応じた姿勢で見守る。
- 接種・発症時刻や症状、薬の使用を記録し、救急診療後に接種先や小児科へ共有して次回接種を相談する。
目次
- 接種後にじんましんと息苦しさが出たら、119へ連絡すべきですか?
- 処方済みの自己注射薬はどう使い、救急車を待つ間はどう過ごしますか?
- 接種後の症状は副反応と決めてよいですか?
- 救急対応の後は、いつ接種先や小児科に相談しますか?
接種後にじんましんと息苦しさが出たら、119へ連絡すべきですか?

はい。全身に広がるじんましんに息苦しさが加わっているなら、通常の予約や原因の特定を待たず、119番へ連絡してください。皮膚と呼吸のように体の複数の場所へ同時に症状が出ているときは、アナフィラキシー(短時間で全身に起こる強いアレルギー反応)を考える状況です1。
予防接種後にアナフィラキシーが疑われる場合には、重いアレルギー反応として速やかな対応が必要です1。
ワクチン後のアナフィラキシーを疑う症状は?
皮膚の症状に、次のどれかが重なっていないかを確かめてください1。
- 呼吸:ゼーゼーする、肩で息をする、せきが続く
- のど・声:声がかすれる、飲み込みにくそうにする
- 全身:ぐったりする、顔色が青白い、呼びかけへの反応が鈍い
- おなか:何度も吐く、強くおなかを痛がる
小さなお子様は「苦しい」と言葉にできないことがあります。泣き声が急に弱くなる、横になるのを嫌がって座りたがるといった様子の変化も、大切な手がかりです1。
119には接種後の状況をどう伝えますか?
「救急です」と告げたら、聞かれた順に答えれば十分です。住所と目印、お子様の年齢、呼吸の様子、じんましんの広がり方を伝えます。
続けて、何時ごろ何のワクチンを接種し、何時ごろ症状が出たか、アドレナリン自己注射薬を持っているか・使ったかを話してください。時刻があいまいでも「接種から1時間くらい」で構いません。詳しい時間を調べるために通報を後回しにしないでください1。
じんましんが薄くなっても救急対応は必要ですか?
必要です。息苦しさを伴った反応では、皮膚の赤みが引いてきたことだけで緊急性を下げないでください。
いったん落ち着いたように見えた後の症状の経過にも個人差があります。再び症状が出るかどうかも含め、医師が判断します。呼吸や血圧の状態は家庭では確かめにくいため、救急隊や医師による評価が次の判断の土台になります。
ポイント
じんましんと息苦しさが重なったら、軽く見えても119番へ。皮膚の変化だけで様子見に切り替えないでください。
処方済みの自己注射薬はどう使い、救急車を待つ間はどう過ごしますか?

自己注射薬を処方されているなら、処方時に医師から受けた「この症状が出たら使う」という指示に沿って判断します。使った場合も使わなかった場合も、息苦しさが続くなど症状が改善しないときは119番へ連絡してください。製品によって操作が異なるため、手順は手元の製品の説明書きと、通報先からの指示を確認します1。
自己注射薬を持っている場合、使用前後に何を確認しますか?
使う前は、処方時に説明された使用の目安に今の症状が当てはまるかを確かめます。食物アレルギーの備えとして処方された薬であっても、息苦しさなどの呼吸の症状は、使用を考える症状として説明されていることが多いはずです1。
判断に迷うときは、119番の電話口でそのまま相談してください。注射するかどうか迷っている間に、通報を遅らせないことが先です。
使った後は、注射した時刻をメモし、使用済みの注射器を救急隊へ渡せるようにしておきます。速やかに使用して症状がすぐに十分改善し、その状態が続く場合は、直ちに救急要請する必要がないこともあります1。
アドレナリン自己注射薬には、次のような副作用が起こることがあります1。
- 注射した部位の痛み、赤み、腫れ
- 胸がドキドキする(動悸)
- 顔色が青白くなる
- 手足のふるえ、落ち着かない感じ
- 頭痛、吐き気
これらは多くの場合一時的とされますが、使ったときに見られた様子は時刻とあわせて救急隊や医師へ伝えてください。
救急車を待つ間、姿勢や飲食はどうしますか?
お子様を歩かせたり、急に立たせたりしないでください。姿勢はそのときの様子に合わせて選びます1。
| お子様の様子 | 姿勢の目安 |
|---|---|
| 息苦しそう | 上半身を起こし、座らせるか大人に寄りかからせる |
| ぐったりしている | あおむけに寝かせ、足を少し高くする |
| 吐いている・吐きそう | 体ごと横向きに寝かせる |
水分や食べ物は口にさせず、呼吸、顔色、呼びかけへの反応を見守ります。様子が変わったと感じたら、もう一度119番に連絡し、指示に従ってください。
祖母など家族には何を頼めますか?
保護者はお子様のそばを離れず、呼吸と反応を見ることに集中してください。それ以外の用事は、近くにいる家族に分担してもらうと救急隊への引き継ぎが進めやすくなります。
たとえば祖母には、きょうだいを別の部屋で見てもらう、玄関の鍵を開けて救急車を外で待ってもらう、といった役割が頼めます。母子手帳(接種記録)、自己注射薬、お薬手帳、保険証をひとまとめにしてもらうのも助かります。症状が出た時刻や変化を横でメモしてもらえば、保護者は救急隊への説明に専念できます1。
接種後の症状は副反応と決めてよいですか?
その場で決める必要はありません。接種のあとに起きた症状でも、原因がワクチンなのか、食べたものや別の薬なのかは、医師が経過を確認しながら判断していくものです。いま保護者がすべきことは原因探しではなく、緊急対応を優先し、分かっている事実を医療者へ渡すことです。
接種から発症までの時間は判断にどう役立ちますか?
接種時刻、発症時刻、症状が広がった順番は、医師が原因の候補を考える手がかりになります。新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーには、早い時間帯に現れた例が報告されています2。
ただ、時間だけで原因や重さを決めることはできません1。接種した部位の赤みや腫れ、発熱などが出ることもあり、症状の見方は医師にご相談ください。「時間がたっているから関係ない」と、ご家庭で可能性を外さないでください。
接種したものと症状の経過は何を記録しますか?
記録は救急対応が落ち着いてからで十分です。分かる範囲で、次の項目を残しておくと伝えやすくなります。
- ワクチンの名前と接種日時(母子手帳で確認できます)
- 症状が出た時刻、広がった順番、いちばん強かった時刻
- 使った薬(自己注射薬など)とその時刻
- 当日食べたもの、ほかに飲んだ薬、運動や入浴の有無
じんましんをスマートフォンで撮影しておくと、薄くなった後でも状態を見せられます。
原因がまだ分からないとき、救急隊や医師へ何を伝えますか?
「接種のあとに起きた」という前後関係と、「接種が原因だと分かった」ことは、分けて伝えます。たとえば「午前10時に接種、昼食後の13時ごろからじんましんと息苦しさ」のように、事実を時刻の順に話すと伝わりやすくなります。
食物アレルギーがあること、当日の食事や服薬も必ずしも関係するとは限りませんが、判断材料として添えてください。予防接種後に起きた症状にはワクチンと直接関係のない事象も含まれるため、原因の整理には診察と経過の確認が必要です3。
救急対応の後は、いつ接種先や小児科に相談しますか?
症状が治まっても、まずは救急で受けた指示どおりに診察や経過観察を続けます。そのうえで、接種を受けた医療機関と普段かかっている小児科へ経過を共有してください。次の予防接種は自己判断で進めず、今回の記録をもとに相談する流れになります1。
症状が治まった後も診察や経過観察は必要ですか?
必要です。前述のとおり、症状が時間をおいて再び現れることがあるため、救急で一定時間の経過観察をすすめられる場合があります1。自己注射薬を使った場合も同じです。
帰宅後は、再受診の目安や処方された薬の使い方など、医師から受けた説明を守ってください。息苦しさが続く、または再び出てきたときは、通常の予約を待たずに119番へ連絡してください。
救急の診察後、かかりつけの小児科には何を伝えて相談しますか?
救急での診断名や処方内容、接種先から受けた説明を確認したうえで、接種記録、症状の経過、薬を使った時刻、今後気になっていることを伝えてください。
かかりつけの小児科に相談する際も、救急での診断名と処方内容をもとに、接種後に出た症状や続いた時間、その前後の食事や運動などの状況を伝えてください。食物アレルギーをお持ちのお子様なら、今回の反応と普段の食事との関係も含めて医師と整理すると、次回の接種を相談する際の手がかりになります。
なお、予防接種による健康被害には公的な救済制度(予防接種健康被害救済制度)があり、気になる点は接種先や自治体の窓口で確認できます4。
次回の予防接種前には何を医師と確認しますか?
今回の症状、接種したワクチン名、救急での診断、自己注射薬を使ったかどうかを共有し、次回の接種をどう進めるかを個別に相談します。同じワクチンを受けられるか、受け方を変えるかは、原因の見通しや接種後の観察体制を含めて医師が判断します12。
お子様自身も「また注射?」と不安を抱えやすいものです。お子様と同じ目線に立ち、何をどの順番で進めるのかを、理解できるまでゆっくり話すことも大切です。
ポイント
救急の診察が終わったら、メモと母子手帳を手元にそろえ、接種先と普段の小児科へ経過を伝えることが次の一歩です。
よくある質問
Q. ワクチンの接種後にじんましんが出たのはなぜですか?
A. ワクチンに含まれる成分への反応や、接種に伴う体の免疫の反応として起こると考えられていますが、個々のケースでの原因は診察を通して判断します。接種後に起きた症状がワクチンと直接関係するとは限りません3。じんましんに息苦しさが加わる場合は、119番へ連絡してください。
Q. 飲み薬などの医薬品でもじんましんは出ますか?
A. 医薬品が原因でじんましんが出ることはあります。どの薬が関係したのかは、服用した時刻や症状の経過をもとに医師が判断しますので、お薬手帳を持参してご相談ください。
Q. 接種した部位の周りだけにブツブツや赤みが出ました。どうすればよいですか?
A. 接種部位の赤みや腫れについては、症状の出方に個人差があるため医師にご相談ください。お子様が元気で範囲が広がらなければ、接種先に相談してください。全身に広がる、息苦しさや強い腹痛を伴う場合は119番へ連絡します。
Q. 乳幼児のアナフィラキシーは、年長児と症状の出方が違いますか?
A. 乳幼児では年長の子どもや大人と症状の出方が異なることがあると報告されています1。言葉で訴えられないため、急に機嫌が悪くなる、泣き声が弱い、ぐったりするなどの変化にも目を向けてください。
Q. 自己注射薬の使用期限が近い、または切れていることに気づきました。
A. 緊急時は119番の指示に従ってください。落ち着いてから、処方を受けた医師に更新を相談しましょう。普段から期限を確認しておくと、いざというときに迷わずに済みます。
参考文献
1. Golden DBK, Wang J, Waserman S, et al. Anaphylaxis: A 2023 practice parameter update. Ann Allergy Asthma Immunol. 2024. PMID: 38108678. DOI: 10.1016/j.anai.2023.09.015
2. Jaggers J, Samarakoon U, Fu X, et al. Anaphylaxis after COVID-19 vaccination: A registry-based study. J Allergy Clin Immunol Pract. 2022. PMID: 35964925. DOI: 10.1016/j.jaip.2022.08.008
3. 予防接種の副反応(3) – 徳島県医師会Webサイト. https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/pc/1037-3413
4. 厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html
5. ワクチン接種“守り”から“攻め”への転換 副反応をよく理解してワクチン接種へGO! ~新型コロナウイルスに負けないぞ!~. https://www.hiroshima.med.or.jp/kenmin/pamphlet/qq_20210909/pageindices/index12.html
大同病院小児科
大同病院小児科医長
大同病院新生児科医長
日本アレルギー学会専門医
日本小児科学会
日本アレルギー学会
日本小児アレルギー学会
日本小児感染症学会
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